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☄️ 映画『君の名は。』を天文学目線で深掘り!彗星が紡ぐ奇跡

新海誠監督の不朽の名作**『君の名は。』**は、東京に暮らす少年・立花瀧と、飛騨の山奥に住む少女・宮水三葉の奇跡的な物語です。この物語の核心には、ティアマト彗星という架空の天体が存在し、単なる背景としてではなく、物語全体を動かす「運命」の象徴として描かれています。

ここでは、ティアマト彗星を中心に、作品を天文学的な視点から考察し、このロマンチックな物語をさらに深く味わってみましょう。

ティアマト彗星:架空の天体が生み出すリアリティ

 

物語のきっかけとなり、悲劇をもたらすティアマト彗星は、フィクションの天体ですが、その設定は非常に緻密に練られています。

  • 名前の由来: 「ティアマト」は、メソポタミア神話に登場する原初の女神、または宇宙的な怪物から取られており、その巨大で恐ろしいイメージが、彗星がもたらす災害を暗示しています。

  • 彗星の分裂: 彗星が地球に最接近する際に核が分裂し、その破片が糸守町に落下するという設定は、現実の彗星の振る舞いとしても科学的にあり得ます。彗星は氷や塵の塊でできており、太陽に近づき過ぎたり、木星などの巨大な惑星の重力の影響を受けたりすると、核が不安定になり分裂することが実際に観測されています。

    • 例として、1994年に木星に衝突したシューメーカー・レヴィ第9彗星は、その数年前に木星の重力で粉々に分裂していました。

彗星の「流星」と「破片」の違い

 

作中では、ティアマト彗星の美しい姿から、破片が落下するまでの描写が描かれています。

現象 天文学的な説明 作中の位置づけ
彗星の姿 太陽に近づく際に氷が蒸発し、ガスや塵が放出されて**尾(テイル)**を引く。 糸守町の人々が楽しみに見上げる**「美しい流れ星」**。
流星 彗星が放出した微細な塵が地球の大気に突入し、発光する現象。 瀧と三葉が夜空で交錯する、ロマンチックな演出
破片の落下 彗星の核そのものが分裂し、大気圏を通過しても燃え尽きない大きな塊が地表に到達する。 糸守町の**湖(クレーター)**を生み出した悲劇的な災害。

この映画は、流星群のような**「美しい天体ショー」と、隕石落下のような「巨大な天体災害」**という、宇宙の二面性を一つの彗星を通して見事に描き分けています。

3年という時間差の謎

 

物語の鍵となる3年間の時間のズレは、天文学的には直接的な意味を持ちませんが、彗星の公転周期のメタファーとして解釈できます。

彗星は、太陽の周りを楕円軌道で公転しており、地球に近づく(見える)周期は彗星によって異なります。ティアマト彗星は1200年周期で地球に接近すると設定されていますが、この「周期」は時間の繰り返しを象徴し、瀧と三葉が3年というズレを超えて繋がる運命的な繋がりを、宇宙の運行という壮大なスケールで表現しています。

まとめ:天文学が彩るロマン

 

『君の名は。』は、彗星の美しさ、流星の儚さ、そして天体衝突の脅威という、天文学的な事象を巧みに取り入れ、時空を超えた壮大なラブストーリーを完成させました。

この映画を観る際は、ぜひ夜空を見上げて、宇宙の法則や彗星の持つ圧倒的な存在感に思いを馳せてみてください。きっと、瀧と三葉が経験した奇跡の重みが、より深く心に響くはずです。